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Let's コミュニケーション![第2回]
あなたの会社、ヤバくない?

-職場の「ことば」健康診断-

 フリーランスという立場上、いろんな職場に出入りする。レギュラーで毎日のようにかよう所もあれば、数ヶ月に一度、あるいは一回きりの場所も少なくない。
 
 かつてはぼくも会社に勤めていたけれど、脱サラしてフリーになった。生活の後ろだてがない不安は付きまとうが、ストレスは極端に減り、仕事に張り合いが出た。結果的に脱サラしたことは正解だったと思っている。
 
 さて、あちこちに出入りしていると、その職場の元気さとか勢いというものが、交わされる「ことば」に表れているのに気が付いた。そこで、今回は職場の健全さを感知するためのキーワードを挙げてみる。それは「オ・ア・シ・ス」。あいさつマナー啓発活動のひとつ、「オアシス運動」でおなじみのそれだ。
 
<オ>「おはようございます」または「お疲れさまです」
 
 あまりに当たり前で、拍子抜けした人もいるだろう。しかしこの何気ないあいさつが重要だ。相手の目をしっかり見て、あいさつを交わす。これが普通に出来ている職場は、例外なく全体がイキイキとして、業績も伸びる。その逆は……
 
 注意点としては、これが社内のあらゆる場所で自然に出来ているかどうか。朝礼で大声を張り上げるのではなく、掃除のおばちゃんから役員待遇の人までがあいさつを自然に交わしているか。この「和やかな雰囲気」が会社の一体感を生む。
 
 とある職場に臨時の仕事で行ったとき、あまりにあいさつが返ってこないのでアルバイトさんにこっそり「どうしてしないの?」と聞いてみた。「いや、皆さん全然あいさつをしないので、しちゃいけないんだと思っていました……」
 
 その職場の現在の業績は推して知るべし、壊滅的だ。
 
<ア>「ありがとう」
 
 会社のエライ人は、つい部下を「社有品」とカン違いしがち。なので、部下が身を粉にして働こうがそれが当たり前と考えてしまう。しかし、上司がスタッフを共通の目的に向かって努力するパートナーとして見ていれば自然と、よく働いてくれたという感謝の思いが「ありがとう」ということばに出るもの。逆に言えば、部下の成果を横取りする上司は絶対に感謝の言葉を発しない。「ありがとう」は良き管理職の判断材料となる。
 
<シ>「失礼しました」
 
 誰でもミスはするもの。それをすぐに「失礼しました」と謝る雰囲気があるだろうか。良き職場であれば、全員でミスとその経過を共有し、二度と同じことを繰り返さないためのクスリにするのだが、ヤバい職場であればあるほどミスを属人的なものとして取り上げ、厳しく叱責する。だからミスした本人はなんとか隠し通そうとしてさらに悪い事態を招いていく。「失礼しました」をすぐに口に出来る職場でこそ、ミスはぐんぐん減っていく。
 
<ス>「すみませんでした」
 
 あれ「シ」と同じ? いやいや、ここはちょっと視点を変えて。
 
 実は、ダメな職場のダメな人ほど、この「すみません」を「ません」と言うのだ。ビジネスメールで「すいません」と書いてくる人で優秀な人物を見たことがない。お気を付けを。
 
 職場を判断するキーワード「オ・ア・シ・ス」。なんだか小学生の生活指導みたいだが、あいさつはコミュニケーションの潤滑油。こうした当たり前のコミュニケーションが当たり前に出来なくなっている職場は、対外的な仕事がうまくいくわけがない。
 
 あなたの職場はことばを気持ち良く交わすことができる環境か、ぜひいちど観察してみては。
 

コラムニスト:山本 耕一 氏プロフィール

山本 耕一
[Kouichi Yamamoto]
1967年福岡県北九州市生まれ。
中学校時代、短波ラジオで世界中の放送を聴くうち「アナウンサーになろう」と決意。日本大学卒業後、テレビ長崎入社。「めざましテレビ」初代長崎リポーターなどを務め、2003年からフリーアナ。
現在は福岡のテレビ・ラジオにレギュラー出演のほか、アナウンサー・声優志望者の発声・コミュニケーション術・就職指導も担当。
気象予報士。家族は妻と2男。

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