本文へ移動

第4回 間違いやすい敬語(2)

ここでは、敬語の考え方や誤りやすい敬語の使い方を、ショートムービーで学べる文化庁のホームページ「敬語おもしろ相談室」より要約してご紹介いたします。

間違いやすい敬語(2)~尊敬語の可能性~ ~マニュアル敬語~

今回は、敬語の可能形やマニュアル敬語などについて紹介しています。
駅のアナウンスで「御乗車できません。」と言っていますが,この敬語の形は適切なのでしょうか。
 「お(御)…する」という表現は、謙譲語Ⅰにあたります。その謙譲語Ⅰの可能形は「お(御)…できる」です。



例えば「(自分が)届けできる」という風に使います。
駅のアナウンスでは、相手(=乗客)の行為なので尊敬語を使うべきところです。

尊敬語の可能形は「お(ご)……になれる」であり、ここでは、その否定の形を使った「乗車になれません」が適切な形だということになります。
なお、「御乗車できません」と言った場合には、「御乗車」と「できません」のつながりが、助詞「は」によって分断されるために、「お(ご)…できる」の否定形とはならず、敬語の形としては問題のない表現となります。
また、特に接客業・ビジネスなどの場合、「(客である)あなたができる」ということを客観的に「可能だ」と言うだけでなく、「あなたにしてもらえる」というように自分が恩恵を受けるような表現に変えることで、敬意を表す形にすることがあります。それが、「お(ご)…いただける」という敬語の形です。この形を使えば、「乗車いただけません」という言い方になります。
 
 

マニュアル敬語

レストランで働いているのですが、「御注文の品はおそろいになりましたでしょうか」と言いながら、何だか変な表現だと思っています。どう言えば良いのでしょうか。
 「皆さんおそろいになりましたか」というのは「お…になる」という尊敬語の形であり、「皆さん」を立てた適切な敬語です。この「御注文の品はおそろいになりましたか」では「御注文の品」を立てていることになってしまいます。したがって、「御注文の品は、そろいましたでしょうか」、あるいは「御注文の品は、以上でよろしいでしょうか」などと言えば良いでしょう。


マニュアル敬語は、言葉のサービスを一定に保つために考えられた、マニュアルで指導し接客などに使用される言葉のこと。敬語を使う人が、それぞれの言葉に、どのような気持ちが込められているのかをよく考えれば、その有効性が期待できるものです。ただし、それを真に生かすためには大切な条件があります。使う側、また指導する側が、マニュアルという「型」を基礎としながらも、絶えず表現について考え、工夫を重ねていく姿勢を持つことです。マニュアル敬語にかかわる問題の多くは、この実践の欠如に起因すると言えるでしょう。
マニュアルによって敬語の使い方を指導する場合にも、また敬語の使い方を習得する場合にも、そこに示された内容に過度なまでに従った敬語使用を避ける態度が必要です。マニュアルに掲げたもの以外の言語表現を用いることを許さないような指導や規制、あるいは、いつでも、どんな相手にでもマニュアルに示された言語表現だけで事は足りるとするような受け止め方、これらは、相手、例えば、顧客にかえって不快な思いを与えたり、その場にそぐわない過不足のある敬語使用になったりすることにつながりやすいのです。
以上のような事柄を踏まえた上で、マニュアルというもの自体が、敬語にまだ習熟していない人、特に、その職場に特有の言語場面での敬語にまだ不慣れな人のためには有効なものであるということも指摘したいと思います。敬語の使い方には、相手や場に応じた幾つかの典型例や型があり、職場などごとに用意されるマニュアルは、そうした典型例や型を示すことによって、まだ習熟していない人への手引として有効なものとなり得ます。

しかし、こうしたマニュアル敬語は、アルバイトの若者や、彼らが働くレストランやコンビニエンスストアなどだけに特有の問題では決してありません。敬語の使い方に問題はなくても、お客の顔を全く見ないまま接客を済ますなど、態度が言葉を裏切っている大人も世の中には少なくありません。
形だけの敬語では、敬意は伝わりません。相手の感情や動作ににじみ出た気持ちを察し、相手の気持ちをふまえて、こちらの気持ちを言葉に乗せることが大切です。
 
【質問】
「読みやすい」という言葉を敬語にすると、「お読みやすい」が正しい?
 
【答え】 間違いです
「分かりにくい(分かり+にくい)」「読みやすい(読み+やすい)」など、「動詞+形容詞」の形を取るものを尊敬語にする場合には、動詞の部分だけを尊敬語にすれば良いのです。「分かる」なら「お分かりになる」、「読む」なら「お読みになる」として,それに「~にくい」「~やすい」を付ければ良いわけです。

TOPへ戻る